おばあちゃんの意義

ナショナルグラフィックの記事に面白い物を発見!

ヒトの他にも閉経後長寿の動物が!

以前ほとんどの動物が、生殖機能を失う閉経=寿命だ、とコラムに書きましたが、ヒト以外に閉経後も長生きする動物がいるそうです。

それはシャチとコビレゴンドウ(ゴンドウクジラの一種)です。

この研究をしたのはエクセター大学の動物行動学講師であるダレン・クロフト(Darren Croft)氏とヨーク大学の生物学者ダン・フランクス(Dan Franks)氏。

フランクス氏によると「500頭余りのシャチを30年以上にわたり追跡して得たデータから、メスのシャチは30~40歳代で子どもを産まなくなるが、寿命は90歳代まで。つまり、子どもを産まなくなってから50~60年も生きるのです 」

クロフト氏は「生物学的には、閉経というのは奇妙なコンセプトであり、生殖を終えた後も長く生きる種はごくわずかです。閉経すると我々が確信をもって言えるのは3つの種のみです」

シャチの社会

シャチは非常に特異な社会システムを有しており、子どもはオス・メスともに自分の生まれ育った社会集団を離れることなく、母親が死ぬまで一緒に生活するようです。

シャチのメスは自分の子ども、特にオスの子どもが成熟して間もない困難な時期を生き延びることを助け、その後は孫の養育を助けるようです。

オスは幼い時にはとりわけ弱く、母親が死ぬとその後1年間の死亡率は14倍にはね上がるという研究データもあるようです。一方、メスの子どもの生存率は、オスほど母親の存在に左右されないようです。

「閉経は、シャチ以外ではヒトとゴンドウクジラでしか確認されていない、進化的にまれな特徴であり、シャチの種の繁栄に大きく関与している可能性がある」と研究チームは言います。

シャチのメスは閉経後も長く生きることで知識や技能を若い世代に伝え、共同体の中で指導的役割を果たします。

メスがずっとそこに居続けることは、若いオスの子どもの生存率を大幅に向上させると考えられ、シャチの種の繁栄に大きく関与している可能性があ理ます。

他の動物はどうなのか

シャチやコビレゴンドウに更年期症状があるかは体が大きく、外洋に生息することからデータ採取が困難で生理学的データは得られていません。

また他の動物が閉経後に長生きする特性を発揮させなかったのはなぜかという点については、利益がコストを上回らなければその様な状態にならないと言えます。

つまりシャチにおいて閉経が進化した理由は、彼らの社会構造および年齢に伴うメスの集団とのかかわり方の変化を理解することが重要だと考えられます。

シャチ家族集団は結束力が強く、子どもはオス・メスともに母親が死ぬまで一緒に生活します。

このような条件下では、メスは年齢とともに自分の属する集団とのかかわりを増していき、ある時点まで来ると自ら子どもを産むよりも、既に産んだ子どもや、その子どもの世話をする役割に転じるほうが、もたらす利益が大きくなるのです。 

閉経後長寿の人間も

シャチの社会では必要に応じてメスの寿命が長くなったと考えられます。

ではヒトはどうでしょうか。

以前は孫のお世話をするおばあちゃんがたくさんいましたが、現在は核家族化でなかなか難しいようです。

しかし「お婆ちゃんの知恵袋」という言葉や民話「うば捨て山」にあるように、たくさんの経験を積んで来たお婆ちゃんは知識が豊富です。

柔軟なコミュニケーション能力や巧みな話術は女性ならではの特性です。

最近はオキシトシン分泌のイクメンもいますが、「母性」が持つ万物に対する愛情も女性特有でしょう。

この様なことから、孫の世話が無くなった今でも閉経後の女性の果たす社会的役割は重要だと私は考えます。

ヒトは「生きがい」や「役割」を持つ事で健康寿命が伸びると言われています。

周りとの関わりを上手に持ちながら、閉経後も笑顔で元気に暮らしたいものです。