乳がん患者さんのヘルスケア

第36回日本骨代謝学会学術集会において、女性のBone Healthに関するランチタイム教育講演が開催されました。

今回薬剤師専門雑誌にその内容が掲載され、エクオールについて記載が有りましたのでご紹介いたします。

ご講演は乳がん患者さんのBone Healthを中心に更年期症状対策、生殖医療など包括的診療を行なっている横浜市立大学 産婦人科の善方裕美先生です。

乳がんの薬物療法とヘルスケア

乳がん治療は複数の診療科が連携して行います。

善方先生の婦人科では、エストロゲン欠乏症状への対策、Bone Health、がん・生殖医療の連携、遺伝性乳がん・卵巣がん検査、タモキシフェン服用中の子宮体がん検査などのヘルスケアが中心です。

特にエストロゲン受容体陽性の乳がんの場合には、ホルモン補充療法を行うことが出来ないため治療がなかなか進まないことが有ります。

その際、産婦人科ではカウンセリングや食事・生活指導、漢方療法などのほか、エクオール含有食品の摂取を中心とした代替え療法を取り入れているそうです。

「エクオールは(中略)更年期症状全般の改善どをあげることがわかっている。また(中略)常用量では乳がん細胞や腫瘍の増殖をさせない基礎データがある。」(本文より)

エクオールはパーシャルアゴニストといわれており、閉経前はエストロゲンとは反対の作用(抗エストロゲン作用)、閉経後はエストロゲン様作用を示します。

「局所での作用として考察すると、脂肪組織の多いエストロゲンリッチな乳房では抗エストロゲン作用を示し、エストロゲンが欠乏している骨組織ではエストロゲン作用を起こすと予測される。」(本文より)

エクオールはフレキシブルに女性の健康をサポートしてくれる様です。

乳がんにおけるBone Health

乳がんの内分泌療法により、長期にわたって低エストロゲン状態となると骨粗鬆症や骨折の発症リスクが高まります。

また乳がんは骨へ転移しやすく骨に関する様々な対策が必要で乳がん治療中はBone Healthは重要な課題の様です。

閉経後の第一選択薬であるアロマターゼ阻害剤は特に骨密度が減少し、骨折リスクが増加するため骨の薬を併用して骨密度低下を防ぐ事が重要です。

乳癌診療ガイドライン2018では、アロマターゼ阻害剤使用時には定期的な骨密度評価を行い、骨折リスクに応じて骨吸収抑制薬を投与する事が記載されました。

骨吸収治療薬とはビスホスホネート系製剤や抗RANKLヒト化モノクローナル抗体といったもので、骨を壊す(破骨)細胞の活性化を抑制し,この悪循環を断ち切ると考えられています。

当院婦人科の女性ヘルスケアの取り組み

善方先生の婦人科では乳腺外科からの併診で受診という形で連携しているそうです。

内分泌療法による卵巣欠落症状への治療は、女性ホルモン感受性陽性タイプの乳がん患者さんにはホルモン補充療法が出来ないことから、漢方薬やエクオール含有食品を使用する機会も多い様です。

エクオールを使用した例として、術後のタモキシフェン治療により頭痛、めまいなどの訴えのあった患者さんに対し、乳腺外科よりエクオール摂取の提案が有り、開始したところ摂取3ヶ月で頭痛VASスコアが低下、症状も軽快。

その後服用休止により症状悪化が見られたが、摂取再開とともに漢方も併用にて症状は落ち着きタモキシフェンによる治療を継続している例が記載されています。

「エクオールは乳がん治療のコンプライアンスをあげる手段として有効であると思われた」(本文より)

 

「低エストロゲン状態の患者さんはQOL(生活の質)低下が懸念されることから、サバイバーに対するヘルスケアは不可欠であると考える。」と善方先生は締め括られてます。

私個人的には、エクオール使用が早く広まり、少しでも乳がん患者さんのQOLが向上する事を願ってやみません。