8/26に「ピンクリボンフェス2018」に参加し、札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科 九冨 五郎先生のお話を聞いて来ました。
乳がんについて
乳がんの罹患率や死亡数などはこのサイトの「ピンクリボン」に詳しく書いてあるので省きますが、罹患率が数年前まで12人に一人と言われていたのに11人に一人となっているのにはビックリです。
乳がんは小さな小さな粒の状態からゆっくりゆっくり時間をかけて大きくなり、8年くらいで約3mm、9年では6mm、10年で12mm、そしてそこからたった1年で20mmまでなるようです。
つまりよく言う触診発見可能な1cmの大きさは10年経ってる乳がん。この辺りで気づくのとその後1年たった2cmで発見するのとでは経過に大きく差が出ます。
1cmになる前、触ってもまだわからないくらいの「早期」に発見する事がとても大事ということです。
1974年から2000年までの約25年間で治療の成績は3倍に向上したそうです。
その理由としては①検診の普及・メディアの報道 ②吐き気止や白血球低下を防ぐ薬などが開発された事 ③生物学的遺伝検索の発展によりその人に合った有効な治療が出来るようになった事 などがあるようです。
乳がんの治療は
手術の方法も1980年代は大きく乳房を切除していたのに対し1990年代は胸筋を残す(温存)手術方式となり、2000年代からは乳房温存術に移行しているそうです。
乳房再建も出来るようになりその症例も増えています。
がんが最初に転移すると想定されるリンパ節・センチネルリンパ節を切除し検査する事でリンパ節への転移が確認でき、転移がなければその先のリンパ節を取る必要が無くなります。
リンパ節を大きく切除すると浮腫になる事が多いため、リンパを取らないとその後の生活が格段に違って来ます。
手術に関しては以前の「熱メス」の使用の際は出血が多かったのに対し、現在は「エネルギーデバイス(UD)メス」で凝固しながら切る事で出血が無く手術時間も短縮されたそうです。
薬物も新しい薬が登場し既存の薬の2倍の効果があるものやがん細胞がたくみに免疫から逃れて生き延びようとするのを阻止する薬(免疫チェックポイント阻害剤)、遺伝子変異によって起こる乳がんの進行を抑える薬(PARP阻害剤)など次々出て来ています。
転移再発乳がんの治療戦略としては完治は難しいと考え、なるべく延長戦に持ち込めるように良いピッチャーをどんどんつぎ込んでいくのが良いと野球に例えてお話になってました。
大谷翔平くんクラスが次々控えてたら安心ですね。
乳がんの遺伝
以前アンジェリーナ・ジョリーさんの事をコラムでも書いた事がありました(こちら)
乳がんの中で遺伝的乳がんは5〜10%と考えられています。そのうちの60%がアンジェリーナ・ジョリーさんと同じHBOCだそうです。
これからはリスクを少しでも減らして行く事も可能になって行くであろうと九冨先生。
今後は遺伝子解析による個別化治療や先ほどの新しい薬「免疫チェックポイント阻害剤」の本格的使用、外科手技もピンポイントに切除する方向に発展するのではないかというのが先生の見解でした。