ロコモティブシンドロームと最新治療

ロコモティブシンドロームは2007年(平成19年)に日本整形外科学会が提唱した呼称ですが、未だに認知は低いようです。

今日は7/8に行われた日本抗加齢医学会北海道研究会から札幌医科大学医学部整形外科学教授 山下 敏彦先生のお話「高齢者における腰と関節の痛み」からです。

ロコモ、フレイル、サルコペニア⁈お若い方もなるのはどれ

皆さんはロコモ(ロコモティブシンドローム)とはどんなものか知っていますか?

「ロコモ」とは「運動器の障害や衰えのために移動能力が低下し、要介護または要介護になる危険の高い状態」を言います。

「運動器」とは筋肉や関節、軟骨・骨などの他、筋肉を動かすために指令を出す脳やそれを伝える脊髄・末梢神経・椎間板を言います。これらのうち一つでも支障が出ると身体はうまく動かない。運動に関わる全ての部位が「運動器」です。

最近はカタカナの色々な言葉を耳にするかもしれませんが、加齢に伴い筋量や筋力が低下していく事を「加齢性筋肉減少症(サルコペニア)」と言い、ロコモの原因の一つとなっています。

「フレイル」は「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態」を言い、運動機能だけではなく更に進んだ状態を言います。

ロコモは運動器の障害により痛みが伴うのが特徴で、比較的お若い方でも日常生活の動きが少ないとプレロコモに近い状態となっています。

腰痛に安静が必ずしも有効とは言えない

痛みの急性期には安静が一番です。薬の服用で痛みを抑える事も重要です。

第一選択薬は非ステロイド性抗炎症薬ですが、胃に負担がかかるのが難点です。アセトアミノフェンはその点では良いですが鎮痛効果は若干弱くなります。

他に抗不安薬や抗うつ薬なども効果がありますがこれらは眠気やふらつき、口乾などの副作用があります。

脊柱管狭窄症では下肢の痛みを伴うことが多く、このような痛みを取る薬を服用します。

しかし腰痛の慢性期には運動療法を行うことも腰痛予防・痛みの軽減には大変役に立ちます。

運動で痛みが軽減する

腰痛は骨盤の傾きが大きく関係しており、腸腰筋やハムストリングのストレッチが効果的です。

筋力の強化は背骨に近いところと腹筋。

腹筋を鍛えるのに起き上がる必要はありません。ドローインで充分です。

ドローインとは膝を立てて仰向きで寝てお腹をへこませたまま呼吸をするというものです。

運動をすることで脳内の鎮静メカニズムが働き、脳内麻薬ともよばれる内因性のドパミンやオピオイドや健全な精神バランスの維持に重要なセロトニンが出て来て、鎮静作用・やる気が湧き出るようです。

そのため反対にうつ状態になると脳内鎮静が抑制され痛みを感じやすくなります。

また運動による筋肉収縮で出てくるPGC-1αといった物質は抗炎症作用があり、腰痛などの痛みだけでは無く、癌・アルツハイマー病・動脈硬化など万病の元といえる体内の軽微な炎症を鎮めることが明らかになっています。

痛みと共存すると言う考え方

最新の治療では「痛みを完全に取り去る」事にこだわらない方向に向かっているようです。

完全に無くしてしまおうとすると「まだ痛い」「いつになったら良くなるんだ」と言う不満やマイナスな思考になる場合もあるようです。

痛みが有ってできない事を見つめるより、「今よりも痛みが和らげばあれも出来る、これも出来る」と言うように痛みが和らいだら出来る事を見つけ、QOLの改善に繋げていけるよう運動療法やカウンセリングを治療に活かすように変わってきているようです。