ごく普通の行動で成り立つ排泄行動

「排泄」という行動にはありとあらゆる日常生活動作が含まれているのをご存知でしょうか。

NPO法人HAP 理事長の宮原富士子先生のお話からです。

コンチネンスケア

排尿や排便が正常の状態を表す言葉を英語で「コンチネンス」と言い、コンチネンスケアは失禁の予防・治療・ケアだけではなく尿や便が出なくて困るといった排泄障害の対処など、気持ちよく一人で排泄出来るようにケアしていく事のようです。

尿に関して言うと、女性の尿道は約3㎝と非常に短いため尿漏れしやすく、逆に男性は約20㎝と長くS字に曲がっているため尿が出にくくなります。

尿失禁にはいくつか原因がある

女性の尿漏れの約50%が「腹圧性尿失禁」で、くしゃみや咳、重いものを持つなどの行為により腹圧がかかる事で尿漏れを起こすタイプです。

尿道から膣、肛門に渡りハンモック状についている骨盤底筋群は尿の排泄に重要な役割を持っており、この筋肉が分娩や加齢で緩む事で腹圧性尿失禁が起こります。

この筋肉は随意筋であり、自分で鍛えることが出来るので筋の収縮や弛緩をコントロール出来るため、腹圧性尿失禁の方はトレーニングを続ける事で症状が改善します。

約20%を占める「切迫性尿失禁」は脳からの排尿指令がうまくコントロール出来ないもので、薬の服用で改善する事が多いと言われます。

この二つの混合型とも言えるタイプの尿失禁は、尿が少量膀胱にたまると排泄してしまう事を繰り返す事で、膀胱を膨らませ尿を溜め込む機能が衰えるために頻繁に尿意を感じてしまいます。

この「混合型尿失禁」は尿を我慢出来るようにする膀胱訓練と骨盤底筋群トレーニングを同時に行なう事で改善していきます。

排泄行動にはあらゆる日常動作が関わっている

排泄はいろいろな意識や動作の組み合わせでできています。

尿意・便意を感じる、トイレ・便器を認識出来る、下着をおろす、便器に上手に座る、後始末をする、衣服をつける、トイレを出て部屋に戻る…何気なく行っているこれらの行動は認知機能に障害が起これば出来なくなります。

トイレまで移動し、便器に背を向け、便器の正しい位置にしゃがみこむ、立ち上がるなどは運動機能が衰えると難しくなる行為です。

便器に正しく座っても膀胱・尿道・肛門、直腸の機能に異常があれば排尿・排便は出来ません。

コンチネンスケアを考えるうえで、どの機能が劣っているのかを把握する事が重要となってきます。

運動機能の衰えで排泄がうまくいかないのであれば、手すりを補う事でスムーズな動きが取れ、気持ちよく一人で排泄が可能になる場合もあります。

排泄の障害だからと言って膀胱や尿道にばかり気を取られず、どの部分なのかを見極める事が必要です。

 

便器の正しい位置に座る行為にも運動機能が関わっています。

女性の筋力は40代から低下、太ももの前側の筋肉の衰えが最も顕著に現れ、50歳では20代の頃の約70%にも落ちてしまいます。

自分一人で排泄するにも筋肉は必要なんだと改めて感じました。