PMS/PMDDの治療法〜食事療法、栄養面から

2016年発行「産科と婦人科」の特集「月経前症候群・月経前不快気分障害の最新知見」から。

東京医療保健大学医療保健学部医療栄養学科 神田 裕子先生、同大学大学院医療保健学研究科 塩見拓也さんの論文です。

女性における栄養・食事と生活習慣の関係性

食生活が豊かになり個人の食生活が多様化することで、栄養素の過不足が問題となってきています。

エネルギー摂取量の適正化、動物性脂肪、食塩、砂糖の摂りすぎなどもあります。

一方で、外食など家庭で食事を作らなくなり、その結果食についての知識と技術が低下している人や、極端にバランスを欠いた食生活をしている人も見受けられます。

食品が豊富に有っても一部の栄養素については不足しやすく、カルシウム不足による中高年女性の骨粗鬆症、若い女性のダイエットによる鉄欠乏性貧血や低体重、コンビニ弁当や出来合い惣菜・ファストフード購入の多い単身者での肥満・糖尿病・高血圧症などやビタミン・無機質欠乏による代謝障害をもたらします。

PMS症状にみる栄養と生活習慣の関連性

一般女性においてPMSを感じる人達は体重増加とむくみを認め、体水分量の増加も認められます。PMSを有しない女性にこのようなことは認められませんでした。

月経前から月経中にかけて食欲は亢進しますがPMSと体重の関係はまだ不明です。

味覚も月経周期に合わせて変動し、黄体期(月経前)には味覚の感度が低下するようです。

喫煙に関しては、ストレスを介してPMSに間接的に影響を及ぼしている報告があり、禁煙がPMS軽減への近道であると考えられます。

PMSの食事/栄養療法に大豆食品を有効活用する

大豆成分はタンパク質、脂質、糖質の他にオリゴ糖を含む食物繊維やイソフラボン、サポニン、カリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウムなどの栄養素が含まれる。

その効果は血圧上昇抑制、筋萎縮抑制、精神的状態に及ぼす影響、保湿性、抗炎症や抗酸化作用、コレステロールの低下や酸化ストレスの軽減、脳機能調節機能、腸内環境や便通の改善、カルシウムの吸収促進など様々です。

近年の注目の「エクオール」に関し、産生の有無とPMS精神症状の関連性を調べてみたところ、

エクオール産生者は「症状なし」約10%、「日常生活に支障がない」約65%、「日常生活に影響がある」約20%であるのに対し

産生できない人は「症状なし」0%、「日常生活に支障がない」約55%、「日常生活に影響がある」約30%、「かなりある」15%でした。

若年者ではエクオール産生に必要な大豆食の摂取量も低く、大豆食品をPMSの栄養療法に取り入れる必要性を強く感じています。

 

 

以上が論文の内容となります。

エクオール産生には腸内細菌の存在があり、大豆食品を摂取することで産生能が高まる事は考えられ、栄養療法に取り入れるのはとても良い事だと思います。しかし、若者の70%がエクオールを作れない現状を考えると、腸内細菌が全く存在しない人の割合も多いのではないかと考えてしまいます。