わかりやすい糖尿病運動療法の実際

先日の糖尿病薬剤師研究会よりJCHO北海道病院 リハビリテーション部 士長 館博明先生のお話をまとめてみました。

糖尿病の治療には

ガイドブックにもありますが糖尿病の治療には「食事」「運動」「薬」の三本柱が大事です。

身体活動量(運動)が増えると2型糖尿病(遺伝的に糖尿病になりやすい人で肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病)は改善します。食事療法と組み合わせるとより効果が得られます。身体活動量の増加は脂質異常症にも効果があります。

運動療法は1型糖尿病(膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなってしまう)には心疾患の改善が見られるという報告があります。

運動の効果

短期での変化は血糖値の低下です。

継続する事でインスリン抵抗性(IR)の改善、高血圧の低下、心肺機能の改善が見られ爽快感やストレス解消もみられます。

IRの改善としては筋肉・脂肪組織・肝臓の糖取り込み容量の増加が考えられ、これはクエン酸回路やGLUT4の増加が関係しています。食事だけではIRは改善せず、体重の減少はなくとも病態は改善するので運動が不可欠と言えます。

しかし、運動だけではカロリー消費はできません。食事・薬物療法との併用が大事と思われます。

実際の運動療法

有酸素運動の次にレジスタンストレーニング、その後ストレッチを組み合わせると怪我予防になります。

強い強度で有酸素運動を行うとエネルギー源として糖質だけを使うようになり、グルカゴンが膵臓から出て血糖を上昇させてしまいます。自覚的にもハーハーゼーゼーを30〜60分続ける事は無理です。

自覚的強度として「とっても楽〜」と「もうダメ〜」の中間「人と話が出来る程度」で有酸素運動をするのが良いでしょう。

MET(メッツ)の利用もわかりやすく、3メッツ以上を1日30分(10分×3でもOK)、1週間に150分を目安にすると良いです。

運動の時間帯はというと、血糖の上昇は炭水化物摂取では割と早く30分くらいでピークが来ますが、たんぱく質では上昇はもう少し後の時間ですし、炭水化物ほど血糖は上昇しません。

レジスタンストレーニング時は息を止めないことが重要です。血圧上昇に繋がります。

NEATを増やす

運動だけで、というのはなかなか難しいことです。NEAT(非運動性活動熱産生)を増やす日常生活を意識し工夫しましょう。

「座る」を1とすると、「立つ」は1.2倍、「歩く」は3倍のNEATとなります。

バスや地下鉄一駅分歩く、階段を使用する、トイレは違う階へ、昼食は遠くへ、コピー・FAXは自分で…

女性の場合、台所仕事は3メッツにあたりますし、雪かきは7〜8メッツ。決して激しい運動ではなくとも大丈夫。

NEATと増やすことで、体重は減らなくても肝機能・LDLコレステロールの低下、HDLコレステロールの増加などと身体内容の変化は現れます。

 

平均寿命が80歳を超えた日本ではロコモ・メタボ対策を考える必要があります。

日常的に意識を高めることが重要だと思いました。